とある田舎に住む男「禿Q」は、実家の子供部屋に寝泊まりし、また決まった職がないので
一日中ネットしながら暮らしていた。プライドの高い禿Qは自分のハゲ頭がコンプレックスで、
「ハゲ」とか「激（ハゲ）しい」とか「励（ハゲ）ます」とかの言葉が聞こえてくると、
「誰がハゲやねんコラ！」とカンカンになって反論しに行くのだが、彼は頭がむちゃくちゃ弱かったので、
基本的には返り討ちにあってばかりいた。

しかし禿Qには「精神勝利法」という最強のマインドセットがあった。
これは、どんな状況であっても自分の中でうまーく解釈することによって最終的には
「俺の勝ち」という結論に至り、精神的に満足できるというもの。
ネットで足りない知能を開陳してネット民にボロクソに笑い者にされたときも、
「今のは、本来尊敬されるはずのエリートオタクがナマポ乞食に殴られたような感じだな。
まったく世の中どうかしちまってるなあ」などと自己解決をして、満足してスヤスヤ寝る。

禿Qは、重度のアイドルオタクで肉欲だけは人一倍強かった。
「あーあ、俺って彼女いないんだなあ」
と思い始めると、もうすっかり女のことで頭がいっぱいになってしまうのだ。
そこで禿Qは金を払って声優事務所に雇ってもらい、ついでに「同業者」である、
有名声優アイドルのSNSに「俺とセックスしよう！」と突然直結願望丸出しで絡んでしまった。

禿Qの下劣なお気持ち表明は当の声優らからは無視され、オーディエンスにボコボコにされたのだった。
なんとか逃げ帰った禿Qのもとに、さきほどの事件を知った事務所職員が現れる。
禿Qは事務所になぜか通常の倍の「レッスン料」をぼったくられたうえに、「自身のHPで公開謝罪をすること」
「今後ウチの事務所には一切出入り禁止とすること」などの条件を提示され、
これらをすべて了承することになった。この事件がきっかけで声優になる道は完全に断たれ、
困窮した禿Qはせっかく上京した豊島区を出て岐阜の田舎に移ってみることにした。

ある日、憎たらしい5chの連中が、ふたばmayにまでやってきたという目撃情報が流れた。
どうやらネットでは「掲示板荒らし」という集団が、各種匿名掲示板を打倒して、
今の日本の体制を根本からひっくり返そうと活動していて、5ch民はその勢力を恐れて、
場末のmayにまで避難しに来たんじゃないか？との噂である。

禿Qはもともと掲示板荒らしのことを「嫌われ者の悪い人」と考えていたけれども、
このようにネット民がウンザリしている様子を見ると、なんだか嬉しくなって
「掲示板荒らしってなんかいいなあ！俺もやりたい！」と思うのだった。
さっそく禿Qは朝から朝まで掲示板を荒らし回り、みんながウンザリする様子を見ては
また満足して眠りにつく、日本社会で最低の生活を始めたのである。

調子に乗っていた禿Qだったが、そこにあるニュースが飛び込んでくる。
あのふたばのｸﾝﾘﾆﾝｻﾝが怒って、警察に訴えたというのだ。
やたらと掲示板を荒らし回っていた禿Qはこの事件の犯人として目をつけられてしまい、
ある朝突然、岐阜県警の皆さんが禿Qの自宅玄関を叩き「禿Qさーん、逮捕令状が
出てるから、署までご同行をお願いしまーす」と連行されてしまった。
無事に逮捕送検された禿Qは岐阜地方裁判所の法廷に立たされた。

そして禿Qの弁明は支離滅裂で裁判官さんの心証を著しく損ね、検察官の「被告人の犯行は
極めて悪質反省もせず自己弁護と自己正当化に拘泥している。従って厳罰を求める」との意見に
弁護人さんも「然るべく」としか言えなかった。
結局、罪状相応の刑として、執行猶予無しの実刑判決が下った。

投獄の直前になって禿Qは「自分は二度と娑婆に出られないんじゃないか」ということにようやく気づくが
時すでに遅し。「申し訳ありませんでした、傍聴人のみなさん助けて！」という
最後の言葉も声にならないまま、あっけなく投獄されてしまった。

ネットの人たちはみんな口々にこう言った。
「やっぱり禿Qは悪いやつだったんだな。じゃなきゃ実刑にされるはずないもんね」
ご近所の皆さんはこのようにテレビの取材に答えた。
「前から変な人が住んでいると思ってましたが、やはり極悪人でしたか」と
また裁判を傍聴していた物好きな人たちは口々にこう言った。
「ネット犯罪者だと聞いてハッカーみたいなのを期待してたけど、単なる知恵遅れ高齢者じゃん。
わざわざ傍聴に来るまでもない、つまんないヤツだったな」

本文無し

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