https://yutorize.work/ytsheet/sw2.5/?id=KeAFwN https://yutorize.work/ytsheet/sw2.5/?id=w8TnH3 その日、〈黒の猪号〉を気に入って(勝手に)書斎にしている高位のビブリオマンサーたちは目にした。 〈黒の猪号〉が予備車両として普段は車庫に収めているがらんどうの車両である。 ふたりは定期整備のために車庫から引っ張り出された車両を見て思った。 『この車両、気がつくと増えていく自分たちの書籍の置き場として利用できないか』と──── [>]''主な人員'' ''[アルマ・ジェフティ#KeAFwN]'' ''[パルネ・ゼルクァス#w8TnH3]'' 双方共に(※滅多に出さない本気を出せば)到達者級の魔法使い。 とはいえ〈黒の猪号〉では気楽な居候。この図書車両を生み出した発端として司書紛いのような役割を担っている。 共に奔放で個人主義なところがあるため担っていないことも多々ある。担っていない場合、来乗車の自由であるとギルド長から定められている。 [>]''車両の構造'' 壁を埋め尽くすかのように拡がる本棚と、そこへ所狭しと並べられた書籍。何はともあれそれに尽きる。 この車両においては訪れる人よりも本が主役とばかりに多くの本が鎮座している。そのため、他車両より出入りのための空間が一回り小さい。 並べられている本のジャンルは様々であり、至極くだらない内容の流布本があったかと思いきや極めて稀な稀覯本が平然と棚に収まっていたりする。 車両には一定間隔で座席が並べられ、この図書車両を利用する者であれば誰でもこれらの座席に腰掛け蔵書に目を通せるようになっている。 これらの座席は当初より用意されていたものではなく、秘文使いたちとリム・トクトの間で交渉が重ねられた結果である。 秘文使いたちは自分たちのため以外にこの車両の利用を考えていなかったのを、ギルド長がより公に開かれた場所として設定した。 車両の奥には2人分のスペースが存在し、それぞれこの図書車両の発端となった秘文使いたちの書斎としての空間となっている。 彼女たちはその空間をまるで我が物のように扱い(※当然だが本来はあくまで〈鉄の猪号〉のものである)、 それぞれの読書並びに魔法の研究成果をしたためる空間として利用し、手に入れた稀覯本をふたりで回し読みなどしている。 [>]''蔵書について'' 前述の通り、収められている書籍は二束三文の流布本から希少な稀覯本まで多岐に渡る。 しかしそのどれもが例外なく高位の魔導師である秘文使いたちによってセキュリティが施されている。 許可なく車両外への持ち出しを行うと────[〈黒の猪号〉により検閲されました。無視することで筆舌に尽くしがたい目にあいます]。 以下は蔵書の一例であり、司書紛いを担っているふたりによる魔法制御あればこそ閲覧可能とするようなものも含まれている。 ''『魔力循環機構に関する基礎的考察』'' 著者:賢者エルマディオ・ケルヴ 分類:真語魔法理論 生物の体内魔力循環を水流モデルとして解釈した初期論文。 現在では一般化している「精神力消耗」の理論的土台となった。 しかし原典には削除された章が存在し、 “他者の循環へ自身を接続する方法” について記されている。 研究者の間では、これが古代の集団詠唱儀式や精神共有魔法の原型ではないかと噂される。 ''『召異界接触時における人格汚染率の推移』'' 著者:辺境研究院 第三観測班 分類:召異魔法 召異魔法行使者の長期精神変質を追跡した調査報告。 極めて学術的文体で書かれているが、 読み進めるほど調査員自身の精神状態悪化が見て取れる。 序盤: 「被験者A、軽度の幻聴あり」 終盤: 「こちらを観測しているのは本当に我々か?」 で締められている。 ''『硝子海に沈む王冠』'' 著者:不詳(筆跡鑑定不能) 分類:失われた王朝史・幻視記録 存在しない王国について記された歴史書。 海底に築かれたという玻璃の王国、その繁栄と滅亡が精密に描写されているが、あらゆる史料と照合しても該当文明は確認されない。 にもかかわらず、読者の多くが「知っている景色だ」と証言する。 本書に描かれる都市構造は奇妙に整合しており、一部建築魔導師は「理論上は実在可能」と評価している。 研究者の間では、「失われた歴史」ではなく「まだ起きていない歴史」ではないかと囁かれる。 ''『肉体変成術における自己同一性維持限界』'' 著者:不詳 分類:操霊魔法・禁忌研究 長期的な変身魔法使用者の精神変質を調査した論文。 特に問題視されるのは、 ・人外形態への依存 ・本来の肉体への嫌悪 ・性別認識の変質 ・種族感覚の混乱 など。 一部の高位魔術師が、既に“元の姿を忘れている”という証言も収録されている。 ''『宮廷料理人ヴァッヘの古代魔法料理大全』'' 著者:美食卿ラドゥーン・ヴァッヘ 分類:古代魔法文明料理学・生活魔術研究 古代魔法文明時代に存在したとされる“魔法料理”を体系化した異色の研究書。 某国の宮廷料理人であった著者が生涯を通じて個人的に行った研究成果が緻密に綴られている。 書中には数百種に及ぶ魔法料理の記録が収められており、 ・一時的に夜目を得る《月見茸の黒煮込み》 ・疲労回復を促進する《暁蜂蜜の香茶》 ・水中活動を補助する《青鱗魚の冷製羹》 ・恐慌状態を鎮める《白花香草の祝祭菓》 など、実用性の高い料理も少なくない。 巻末には著者自身の手記が残されている。 「王は不死を望み、兵は勝利を望み、賢者は真理を望んだ。されど人が最後に帰るのは、結局のところ食卓である」 ''『眠らぬ塔の子守歌』'' 著者:白眠の賢姫セレスティナ 分類:精神魔法・夢界接触文献 夢を見ることを「魂が夜ごと別世界へ帰還する現象」として扱った異端書。 読者を眠気へ誘うような柔らかな文体で綴られているが、読み進めるほど現実感覚が希薄になる。 書中には夢を媒介にした魔術体系が詳細に記されており、 夢の中でのみ会話可能な存在との交信 他者の夢へ介入する歩法 夢死が現実へ影響する条件 など、危険な技法が散見される。 最後の頁には、毎回異なる筆跡でこう書き足されている。 「おやすみ。またこちらで」 ''『やさしい終末の作法』'' 著者:終鐘の司書メルヴィン 分類:〈大崩落〉論・禁書 〈|大崩落《ディアボリック・トライアンフ》〉を「避けるべき災厄」ではなく、「正しく迎える儀礼」として記した奇書。 各章では、 ・空が割れる日の祈り ・星が落ちる夜の食卓作法 ・世界最後の対話に適した言葉選び などが淡々と説明されている。 妙に穏やかな語り口のため恐怖を覚えにくいが、読後には強い喪失感が残る。 一部の終末信仰集団が聖典視している。 [>]''利用上の注意点'' 原則として、蔵書の扱いに関してのみ、ギルド長からの命令よりも特に優先して秘文使いたちの指示に従うこと。 それ以外のことに関しては、ギルド長の命令を第一とし、遵守すること。 蔵書の中には大いなる成果に比する大いなる代償を伴うものが何冊かあるため、利用の際は秘文使いたちの指導を受けること。 また、その過程を踏まない場合における責任を〈黒の猪号〉及び秘文使いは負わないものとし、これを無視したものが被る損害について考慮しない。