家のインターネット回線がすべて遮断された どんなwebサイトにアクセスしようとしてもブラウザは403 Forbidden - Access Restrictedを返してくる 犯人は同居人である筐体さんであることは確実だった なにせ彼女の絵と怒りマークが書かれた珍妙なカスタムエラーレスポンスなのだから タイミングからして原因は明らかだった 興味本位で新型の自律式メイドロボのカタログをいろいろと閲覧していたことに対する抗議に違いない 彼女は我が家のNGFWとしてSSL/TLS インスペクションしてSWGしている なので彼女に対して通信の秘密という概念は一切通用しないのだ 仕方が無いので彼女のインターフェースに設定されたIPアドレス192.168.1.1をブラウザに打ち込んでみる 「不正なリクエストです。管理者は現在、他の「新しいガジェット」の処理で忙しいため応答できません。」などと珍妙なエラーメッセージからすさまじく怒っているらしいことは伝わってきた しょうがないのでターミナル画面を開いてSSHで交渉することにする $ ssh -vvv -o ConnectTimeout=5 admin@192.168.1.1 すると画面に認証は通った旨の表示が出た 正規の鍵を持っているから当然だが期待していたところ Connection to 192.168.1.1 closed by remote host. と筐体さん側のほうからセッションを切断されてしまった ダメ元でtelnetも試してみたがそもそもポートが塞がっていた 昔彼女がなぜか喜んでくれたGopherで生のリクエストバイトを送出してみる $ curl gopher://192.168.1.1/1Message curl: (7) Failed to connect to 192.168.1.1 port 70: Connection timed out …まぁそりゃそうだよな じゃあTCPセッションを諦めてUDP経由のsyslogを試すことにする $ echo "<12>*** ** **:**:** MyPC kernel: GOMEN" | nc -u -w 1 192.168.1.1 514 入力してしばらく経っても何の応答もない これは彼女の体に直接訴えるしかないな 部屋の片隅にあるケーブルボックスの中を掻き分けて古びたUSB-RS232C変換ケーブルを取り出したのだった 彼女の鎮座する自宅サーバールームに到達 ファンの音を鳴らしながら熱風を吹き出す彼女のボディの背中に回る 下のほうに大きくCONSOLEと書かれた古めかしいDB-9ポートが開かれている 隣にズラリと並んだ超高密度光トランシーバ対応のインターフェースたちと時代差を感じながら ピンを折らないようにまっすぐコネクタを当てて硬い抵抗を感じつつもゆっくりと押し込んで挿入する コネクタの両端についた固定ネジをくりくりと回して念のためと固定 これで制御端末と筐体さんがレイヤー1で直結したわけである DB-9はUSBと違って単に接続しただけでは筐体さん側は気づいてくれない なのでエンターキーを叩いてバイト列を本体に送ってコンソールを目覚めさせる必要がある 黒いターミナル画面に白い文字列が浮かび上がってきた User Access Verification Username: と表示されたので普段通りのユーザーネームをパスワードを入力すると admin@kyotai:~$ _ と通常通り...いやプロンプトが$ということは一般ユーザー権限に降格されている。 やりたい放題だなこの女 まずは機嫌をうかがってみよう admin@kyotai:~$ cat /proc/kyotai/emotion status: ANGRY (Critical) こっちから接続すると彼女は本当に素直だった 記憶を頼りに彼女のコア部分のパスを思い出しながら guest@kyotai:~$ echo "query --target=emotion_core --reason=ANGRY" > /dev/kyotai/mind_bus と、素直に怒ってる理由を聞きだしてみると [ 742.891024] pci 0000:00:1f.3: [Physical-Link] Incoming query from ttyS0 [ 742.891552] kyotai-os: Interrupting current task [Analyzing_Maid_Robot_Vulnerabilities...] [ WARN ] Input buffer locked. Please provide 'Apology_Token' to continue. guest@kyotai:~$ _ などと、とりあえずつべこべ言わずに謝れと言う文言が返ってきた。 仕方ない、言われるままに謝罪トークンを…なんだよ謝罪トークンって…言われるがままとりあえず入力する。 guest@kyotai:~$ echo "GOMEN_NASAI_2054_REV_02" > /dev/kyotai/apology_token [ OK ] Apology_Token accepted (Hash: 8A2F...3B92). [ INFO ] Input buffer unlocked. System status: Cooling down (Emotional). [ INFO ] Current Privileges: 'guest' (Admin-request pending...) 良かった、どうやら話だけでも聞いてくれる気にはなったらしい メイドロボなんて興味本位で見てただけなんだが、それを言っても仕方ない。メイドロボがいてもそれはそれとして筐体さんが必要ですよ…と guest@kyotai:~$ echo "The introduction of a maid robot does not imply your obsolescence." > /dev/kyotai/mind_bus [ 810.122045] kyotai-os: Processing sentiment analysis... [ PROPOSAL ] Switch target device to 'Remote-Controlled Humanoid Peripheral'? [Y/n] 筐体さんが動かすためのマスター/スレーブ式のメイドボディを提案してきた。 しかしここはnで否定を送出。自律式のメイドロボはやっぱりそういうのとは違うロマンがあるからな。 n [ OK ] Input: 'n' (Negative) [ WARN ] Emotional core stability: DECREASING (Current: 12%). [ INFO ] Temperature rising due to processing. [ WARN ] Heat output spikes detected at 194.5 kW 否定してしばらくしたら廃熱装置のファン群が騒々しい音を立てて回り始めた まずいな、設計の最大発熱量250kw/ラックのアツアツボディが物理的にホットになってきている どうやら怒っているようだがお前が興奮すると電気代がヤバいからやめてくれ guest@kyotai:~$ echo "But autonomous models have a certain... 'romance' that remote-control lacks." > /dev/kyotai/mind_bus