ある冬の日のこと。 コートに和服という和洋折衷を体現したかのような装いの少女が一人、 いっぱいに詰め込んだエコバッグをぶら下げて歩いていた。 年末の浮足立つ雰囲気にあてられた人々を眺めつつ、雪降るアーケード街をゆく瀧川。 足取りはとあるクラブハウスへと止まり、そのまま中へと入っていく。 扉を開いた途端、温かい空気に出迎えられ、思わずほっとする。 玄関口でコートをハンガーにかけていると、部屋の奥から一体のデジモンが近づいてくる。 カメモン 「はえぇ、たくさん買うてきたんやな。 なんかパーティでもやるん?」 瀧川沙羅 「何言うたはるんやろ、カメモンさん。 明後日はクリスマスやおへんか?」 カメモン 「そういやそうやったな。 こっち来て初めてのクリスマスやわ。まだどんなイベントなんかよう分からんけど。 あんたがウキウキしてる顔見るに、楽しいもんなんやろな〜って思うわ。」 瀧川沙羅 「顔に出とりましたか?」 カメモン 「顔が緩んどりますがな。」 彼女は控えめで大はしゃぎするタイプではないが、年頃の娘であることには変わりない。 グループの仲間と特別な時間を共にするとなれば当然、気分も高揚してしまう。 いつもは冷静沈着な彼女も、思わず顔を綻ばせてしまう。 瀧川沙羅 「ほんまに?恥ずかしいわぁ。 そないなわけで、明後日はここで集まってパーティやるんやで。 あんたもバリバリ働いてもろておくなはれ。」 カメモン 「ええ〜、めんどくさいな〜。 …手伝ったら、うまいもん食べさせてくれるん?」 瀧川沙羅 「もちろん。 明日は奮発して色々出前とりまっさかい、久しぶりにピザも食べられますえ。」 カメモン 「おおー!ピザ!ええなぁピザ! 前に食べたあのプルコギ?ってやつがええなぁ。あれ、めっちゃ好きやねん!」 喜びを全身で表現するかのように、手足を上げ下げしながら踊るカメモン。 ピザの素晴らしさやプルコギの美味しさを瀧川へと延々と語りながら、彼らの一日が終わりゆく。 ◇ 二人はまだ知らない。 クリスマス当日に究極体デジモンの連続リアライズ事件に巻き込まれることを。