……そもそも私はあまり集団で浴場に入ったことがない。 アビストランク――アビスボーン特有の、多くの人が見れば心理的嫌悪感が浮かぶ暗紫色の痣だ――が腹部にあるのが大きな理由だが、 そのアビストランクを切り取ろうとしたような大きな古傷が、あまりにも目立つためだ。 私だって誰にだって見られたくない、忌々しい傷。 それが何故、今こうやって覆す気持ちになったのか。 泊まった宿の温泉地にあった売店で「おや、こんな所に良いものが」とルコエがスッと見つけてくれた、 水色の浴場用衣服――ワンピース水着というらしい――を見つけてくれた事もあるかもしれない。 「……安心してください。着替え用の個室もあります」 「それ以上に……私達は、そういった悩める人々にもこの温泉を楽しんで頂きたいのです」 「ラクシアに暮らす人々の心を癒やし、整えてあげたい……その思いで営んでくるのですから」 ……タメルがそっと宿の湯守に聞いた際の優しい笑顔と共に帰ってきた言葉が、私の心を落ち着かせてくれたのかもしれない。 ……一番は、私が『……入ってみたい』と本心を打ち明けられるくらい3人を信頼することが出来て、 3人が私の本心を踏まえて考えてくれたのが深く伝わったからだと思う。 そう考えていると、胸が……いや心が、かな。これって。 熱くなっていくの感じ……… あれ? 「うー、それにしても暑いな……己れは水風呂は好きだけどこれは苦手かも……ねぇ聞いてるルシア……ルシア?」 ……いきなり、初めての蒸気浴場に入って……みたのは、いさみあしだったかも……しれな 「あっ」 === 「ピュギャーオ!?ギャオオオオン!!」 (ご主人!?大丈夫ですか!?お水飲みましょうお水!!)