トレセン学園には、個性の強いウマ娘なんてものは珍しくはない。 イマジナリーフレンドの類がいるなんてのも、ありふれてはないがいるはいる。 「自主練か?」 「はい、彼には程々にとは言われてるんですが」 「そうか」 その日、トレーナーは担当しているサキガケサンゾウが自主トレをしてるところに遭遇した。 少し意気が上がってるようで、彼女が持参していたスプレー等でケアをする。 「彼は、練習で本気を出したら回復が間に合わないぞって」 「そうなのか」 サンゾウが並外れた能力の持ち主であること、そして全力を発揮した後の回復が遅いことは知っていた。 正確にはその傾向があることは知っていたが、彼というのはそこも把握していたようだ。 他のトレーナーには手を抜いてるように見えるのも、彼にとってはそれでなければいけないと知っている。 「なぁ、彼って、会えるのか?」 「いえ、彼はその…なんなんでしょうね?」 「霊魂的な…あれなのか?」 「多分」 まぁ、トレセン学園でトレーナーしてると珍しい話ではない。 そもウマ娘の魂というのはいろいろスピリチュアルな領域にある、そこには人知の外だってある。 「彼は強いのか?」 「ダービーを勝ったことがあるとは」 「相当だな」 ダービーは世代の頂点、それを勝ったなら相当強いはずだが。 「他は?」 「話してくれなくて、それにレースに関しては、全部丸投げしてて」 「丸投げ?」 「彼の世界ではレースはチーム、私達もレースはチームですけど走ると一人だから」 レースはチームでするもの、だが実際にターフで走るのはサンゾウだ。 作戦はトレーナーが考えて伝えるが、実行できるかはサンゾウ次第というのも、一緒に走れたら走ることだけに集中させれるのはそうだが。 「彼とは昔からなのか?」 「はい、ただ先の事はあんまり」 「理由は?」 「知らないほうが楽しいって、私もダービーバだということだけで誤魔化されてましたし」 「ダービーの名前の重さがあるからな」 どっちにしろ、彼は相当強い存在らしい、そんな存在がついてるサンゾウも、すごいウマ娘になるかもしれない。 そしてそうなれるかは、トレーナーである自身の腕次第だが。