「僕も仲間に入れてよ!使えるよ!」 「荷物持ちならやらせてやる。報酬は他の半分だ」 「僕も戦えるよ!報酬おくれよー!」  今日もヨシタカは酒場でパーティーを探していた。  荷物持ちや雑用なら、という声もあったが、ヨシタカは戦闘員としての仲間入りを望んでいた。  自分と同じくらいの少年少女がパーティーに居るのに、自分だけ相手にされないのがヨシタカには納得できなかった。  ここは酒場であり、ヨシタカのような子供がいること自体がおかしいのだが、とは酒場のマスターは言えなかった。 「ちぇっ」  酒場を出て通りに出る。 「強化してあげるよ!強化してあげるよ!」  酒場の周りをウロウロしているのは通称「バフ坊や」だ。  コイツのバフは効果量が低い上に上書き不可という呪いのようなものだ。  皆から蛇蝎のごとく嫌われ、鼻つまみ者として扱われるこのバフを、ヨシタカはわざわざかけてもらいに行く。  同じ鼻つまみ者としての同情と、単純に仲間がいないヨシタカにはこんなものでもありがたいからだ。 「強化しておくれよ!」 「強化してあげるよ!強化してあげるよ!」  バフ坊やのバフを受けると、ちょっとだけ強くなった気がした。  今日は東の森にでも行こうか。  そう思って通りを歩いていると、人にぶつかった。 「きゃ!」  ぶつかった女性はバランスを崩し、わざとやってんのかというくらいに盛大に転んだ。 「だ、大丈夫ですか?ごめんなさい」  ヨシタカが駆け寄る。 「大丈夫です。ごめんなさいね、大げさに転んで」  そう言って女性がこちらを向く。  綺麗な人だった。  お姫様みたいな人だと思った。  そのお姫様の胸からそれはもう大きなおっぱいが零れている。おそらく転んだ時にはだけたのだろう。 「きゃっ」  女性がはだけた胸を手で覆い隠す。 「ご、ごめんなさい」  なぜか女性の方が謝る。  女性の服が崩れてあちこちが見えている。その姿のあまりもの無様さに、ヨシタカは着ているローブを脱いで覆い隠した。 「あ、ありがとうございます」 「大丈夫?」 「ちょっと待ってくださいね」  女性が服を直す。かなりモタモタしている。 「ごめんね」 「いいえ、ぶつかったのは私も一緒なんですから」  女性が服を直して、ヨシタカもローブを羽織る。 「それに、恥ずかしい姿を晒したのはお互い一緒みたいですし・・・♪」  女性はヨシタカのローブの下の防具を思い出して少し笑った。 「なんだい、皆して笑って!これはとってもいい防具なんだよ!」 「ごめんなさい、でも、防具という事は、貴方も冒険者なんですか?」 「うん。お姉さんも?」 「いえ、私は冒険者には向いていなかったみたいで、今は別の仕事をしています」 「そうなんだ。僕も皆に相手にされなくて、いつも一人だよ」 「まあ、そのお歳で一人で?こんなところではなんですから、お茶でも飲みながらお話しませんか?」 「し、知らない人についてっちゃダメなんだよ」 「誰だって最初はみんな知らない人で、これから知り合いになるんです。まずは自己紹介をしましょう。私はストロベリー。あなたは?」 「僕はヨシタカ。お姉さんおいしそうな名前だね」 「ふふ、おいしいですよ。大人になったら食べに来てください。では、行きましょうか」 「うん!」  手をつないで二人は喫茶店に行った。  ストロベリーとの話は心地よかった。  教養と物腰の柔らかさを感じさせ、何より声と顔がいいのでそれと面と向き合って話だけでも心地いい。  実家から持ち出した装備がそれなりにいい事、それによって未熟な自分でもかなり強力な魔物を倒せること。彼女の相槌を聞きたいがために、ヨシタカは自分の事をぺらぺらと喋った。 「そういえばお姉さんはどこに住んでるの?」  ヨシタカにそう言われて、一瞬の沈黙の後、ストロベリーが不敵に笑って口を開いた。 「私、実はお姫様なんですよ」 「そうなの!?」 「城が魔物に攻められて、逃げる途中で家臣たちとはぐれてしまって・・・今は、生活のために少し大変なお仕事をしてるんです」 「そうなんだ。どんな仕事なの?」 「ちょっと・・・人に言うのははばかれる仕事です」 「大変だね」 「ええ。ああ、誰か早く迎えに来ないかしら」  そう言ってストロベリーは祈るように天を仰ぐ。 「じゃあ、僕が連れてってあげるよ!お姉ちゃんの国まで!」 「まあ頼もしい!ふふ、貴方が高名な冒険者になるまで待ってますね」 「任せてよ!すぐにパーティーを組んで、お姉ちゃんを護衛してあげる!あ!護衛が終わったらお姉ちゃんの国に仕官させてよ!」 「ええ、ええ、約束いたしますわ!」  それからも二人は将来の事を語りあった。  傍から聞いているものがいれば夢物語だと思っただろう。 「私はそろそろ行きますね。今日は話を聞いてありがとうございます。お仕事以外でこんな話を聞いてくれる人なんていないもので・・・」 「うん、お姉ちゃん、頑張ってね!僕も頑張るから!」  そう言って二人は別れた。  再開はすぐに成った。  そろそろ酒場の開店時間だ。  近道をしようと入った裏路地で、うごめく影があった。  警戒して進むと、そこには裕福そうな男と、護衛らしき数人の男と、ストロベリーの姿があった。  ストロベリーは裸で四つん這いになっていた。 「おい」  ヨシタカは剣を抜いて姿を現す。 「貴方・・・」  ヨシタカの姿を見たストロベリーが驚きの表情を見せる。 「その人から離れろ」 「違うの、これは・・・!」 「おや?彼女の知合いかな?何か勘違いをしているようだね。これは彼女の仕事なんだよ」  裕福そうな男が口を開く。 「・・・?」 「だって彼女、娼婦だからね」 「・・・!」  ストロベリーがヨシタカから目を背ける。 「ちょっとショックだったかな?」 「大変な仕事って、これ?」  ヨシタカはストロベリーに聞いた。 「はい・・・」 「お姫さまのやる仕事じゃないよ」  それを聞くと、男は愉快そうに口を開いた。 「はは、またその設定かね?この娘はちょっと頭がおかしくてね。自分の事を亡国のお姫様だと思い込んでいるんだよ」 「う、ううっ・・・」  ストロベリーの目から涙が零れる。 「ほ゛ん゛と゛う゛、だ゛も゛ん、わたしは・・・」 「助けてあげるね」  ヨシタカがそう言って刀を握る手に力を籠めると、 「おい、お前達。拘束しろ。殺すなよ」  男の合図とともに、護衛達がヨシタカを取り押さえた。 「ぐっ・・・」 「ショックだろう。うんうん、わかるよ。だから、ストロベリーちゃん、こういう可哀そうな男の子には何をすればいいかわかるね?」 「わん、わん♪」  それを聞いたストロベリーが四つん這いのままヨシタカに迫ってくる。  その犬の鳴き声は軽快で、どこか嬉しそうだった。  ヨシタカは拘束されて仰向けにされている。  仰向けにされているヨシタカの足元に来ると、ストロベリーは四つん這いから這いつくばるようにして、ヨシタカの体に豊かな胸を押し付けながら迫ってきた。 「最後までしてあげなさい」  やがてストロベリーの顔が眼前まで迫ってくる。 「・・・ごめんね。でも仕方ないよね」  ストロベリーの瞳には妖しい光が湛えられていた。 「だって私もあなたも、こんなに弱いんだもの」  そう言ってストロベリーはヨシタカの唇を奪う。  最初は優しく愛撫してくれたストロベリーは、やがてケダモノのような声をあげてヨシタカを激しく犯した。 「ははは、これがお姫様の出す声かね?」  それを見ながら男が笑う。  精巣が空になり、尿道に残った精子まで吸い上げられた。  全てが終わった後、ストロベリーは 「貴方も大人になったら私を買ってくださいね。もっとすごいこともしてあげますから」  と言ってヨシタカの頬に口づけた。 「久しぶりに興奮したよ。追加料金を出すから宿に帰って私の相手も頼むよ」 「わん・・・♡」  拘束を解かれたヨシタカはもう立つこともできなくなっていて、しばらく虚ろな目をした後、ようやく立ち上がって、自分の精液とストロベリーの愛液でぐちゃぐちゃになった服を着た。  それからしばらく、ヨシタカはストロベリーと会っていなかった。 「僕もパーティーに入れてよ!」  今日も酒場で冒険者たちに声をかける。 「またその話かしつけぇなオメーも」  そしていつも通り相手にされない。  その時、大きな音が聞こえた。 「お、おい!魔物の襲撃だ!城壁の外から攻撃されてる!ありゃドラゴンのブレスだぞ!」  それを聞きつけた冒険者たちがそれぞれの武器を手に酒場から出る。  ヨシタカもそれに続く。 「いい気分で酒飲んでるって時によお、空気読めよ!」  不機嫌そうに冒険者たちが構える。  その時にはもう、ドラゴンは街に降りたっていた。 「ん・・・?なんかでかくね?」 「ありゃ街にも襲い掛かってくるはずだ」  ヨシタカはドラゴンを見たことが無いが、アレは普通のドラゴンよりも幾分かでかいらしい。 「行くぞおめーら!」 「無理するなよ!追い出すだけでいいんだから!」  そう言ってドラゴンに向かって駆け出す冒険者たち。  ドラゴンのブレスがこちらに向かって放たれる。  大きな体躯に見合った強力なブレスだった。  ある者は盾を構えて耐え、ある者は避け、ある者は建物の陰に隠れ、ある者は・・・避けることも耐えることもできずに火だるまになった。  冒険者たちは戦ったが、ドラゴンは強力で、ある者は力尽き、ある者は撤退した。  戦いに巻き込まれて街が破壊されていく。  その時ヨシタカは見た。  瓦礫の中で逃げ遅れているストロベリーの姿を。 「お姉ちゃん!」 「あ・・・」  ヨシタカが駆け寄ると、ストロベリーは気まずそうにこちらを見た。 「早く逃げて!」  ストロベリーの元にドラゴンの顎が迫る。  その時、ヨシタカがドラゴンの前に立ちはだかった。  ヨシタカは刀を大きく振りかぶる。  師匠から教えてもらった唯一の剣技。  強力だが大きく隙が大きいため普通のサムライはあまり使わない技。  これを確実に当てられる者は滅多にいないとされる技だが、向こうから迫ってくる巨体に当てるのはそう難しくなかった。 「斬鉄!」  強力な斬撃がドラゴンの顎を切り裂いた。  ドラゴンが怯む。  だが、すぐに怒りの形相でヨシタカ達に巨大な爪を振りかざした。  当たる。誰もがそう思った。  しかし、爪が当たる瞬間、ヨシタカとストロベリーの姿が搔き消えた。  ヨシタカはストロベリーを抱きかかえて離れた場所に移動していた。  誰の目にも、ドラゴンにも、ストロベリーにも何が起こったのかわからなかった。  ただ、そこにいるのは、顎を大きく切りつけられてブレスが吐けなくなった傷だらけのドラゴンだった。 「今だ!行くぞお前ら!」  冒険者たちが再びドラゴンに群がる。  ドラゴンはたまらず翼を広げ、空に飛びあがり、そのまま彼方へと飛び去って行った。  ストロベリーはヨシタカを見つめた。  そこにはいつもの幼さは無く、「戦う男」の目をしていた。 「あの・・・」  ストロべりーが口を開く。 「ん?」 「ありがとうございます。なんとお礼を言ったらいいか・・・」 「いいよ。だって僕たち、友達だもんね!」  ヨシタカはいつも通りの無邪気な笑顔でそう言った。  ストロベリーはそれをキョトンとした表情で見つめていた。  治療が終わると、ヨシタカはストロベリーの宿に呼ばれた。 「豪華な部屋!」 「はい。私、これでも売れっ子なんですよ?」 「あの仕事・・・まだ続けるの?」 「ええ。私、あの仕事くらいしかできないですから」  ヨシタカの顔が少し曇る。 「ごめんなさい。私こういう女なんです」 「うん・・・」 「嫌いになりました?」 「そんなことない!絶対!僕が助けてあげるね!」 「ふふ、貴方ならできるって信じています」  そう言って、ストロベリーはヨシタカを抱きしめる。 「むぐ・・・」  ストロベリーの豊かな胸に顔が埋もれる。  ぐい、と顔を持ち上げられる。息苦しさから解放され、ストロベリーの顔が真近になる。 「だって私・・・あなたに運命感じちゃったみたいです」  そう言ってストロベリーはヨシタカに口づける。  抵抗はしない。むしろ期待してしまうヨシタカだった。