【二次創作注意な】【約3700字】 これはカスミガセキ決戦とラオモト知事就任後即暗殺の混乱を生き残った場合の我がデッドリーブレイカーのシミュレーションです。 あくまで私の独自解釈となり内なる次元の出来事です。 現在imgIRCにて毎日更新中のニンスレダイスのソンケイ次元を下地にしてますが、本編とは全く関係なく便乗しただけです理解できましたか? 理解できない方はキルカタナが寝る寸前にフートンへゲーミングエンハンスをしてきます。 【グッバイ・デイ・アフター・デイ】 黒橙の色付きの風がビル街を駆け抜ける、街の合間を飛び回りパルクールめいた動きでカチグミエリアのとあるマンションの屋上へ着地した。 「……ただいま」 静かに着地したマントが目立つ装束に身を包んだ彼女の名前はデッドリーブレイカー、このネオサイタマで傭兵をやっているニンジャであり、その胸と尻と太腿は豊満である。 顔を上げ雲の隙間から散らばる星空を見つめる。そのまま割れた月がよく見える位置へアグラし腕にぶら下げていた紙袋を開いた。 「まさか月が砕けるとはね、またとない機会だし折角だから月見スシと洒落込もうか」  幸い重金属酸性雨は降っておらず濡れる心配は無い。 袋からスシが入った箱を取り出し胡座の上に置く、再び手を袋に中からは二つ目のスシ!更に手を伸ばし三つ目のスシだ! アペタイト!三人前である。 「大仕事が終わった後は自分にご褒美が必要だよね。労ってやらないとストレスが溜まって体調が崩れるかもしれないし……勢いで買っちゃたからって残すのはイケナイことだからこれは仕方ない仕方ない」 欺瞞!全ては食欲なのだ! アマクダリ、ソウカイヤ残党や騒ぎに乗じた胡乱なストリートニンジャやヨタモノの鎮圧。 家を無くした者たちやストリートチルドレン達への支援や手伝い。 スシを独占せんとするスシパンクスニンジャ集団『シャリンコボーイズ』との激闘を終えてひと段落したこの日、手帳の最初のページに記載したスシ屋に頼み込み特上スシを用意してもらったのだ。 「机も使わずに食べるなんて行儀が悪いけど今日ぐらいは許してよね」 今いる場所はかつて彼女が住んでいたマンションの屋上だ。 元の部屋は別の家族が借りていることは確認済みであり戻ることは叶わない、この場で話しかけても誰も返答はしないが、今はただこの場所に来たかったのだ。 「……さて鮮度が落ちないように早速味わいますか」 寂しさを誤魔化すように丁寧に黒く高級感のある蓋を外す。 そこには上等なショーユとオーガニック・ワサビが小分けされており、そして食べられるのをまだかまだかと待つ煌めくスシ達が並ばれていた。 大きな腹の音が鳴る、袋から白樺の箸を取り出して二つに、チャのボトルを上下に揺らし香りを最大限に高め臨戦体勢へ。 再び箸を一つにして手を合わせる。 「いただきます。」 食材への感謝の合掌とチャントを唱えた。 スシを食べ始める。タマゴ……いやトロだ。そしてタマゴ。マグロ。サーモン。エンガワ。イクラ。コーン。エビ。アナゴ。ホタテ。一人分を容易く平らげ、チャを半分飲み干す。 二つ目に手を伸ばす。口も踊り出す。 「大変だったんだ、ニンジャになってからどうすればいいかわからなかった」 イクラが潰れショーユの味が弾ける、サーモンの脂が旨みを滑らせ舌から喉へ。 「幸運にも助けてくれた人がいるんだ、あの人が居なかったら今ごろどうなっていたんだろう?」 ホタテのミルキーで濃厚な味、エビの身と尻尾の弾力、食感を味わい、タレのついたアナゴとシャリをホロホロと舌の上で崩す。 「ニンジャの仲間も出来たんだ、それはもうすごく濃い連中だからしっかりしなきゃって、あっでもアタシ置いてカレー行ったのはちょっと怒っちゃった」 エンガワのコリコリとした食感と脂、それに負けない濃い味のマグロ。 ワサビをつけすぎたのか鼻がつんとする。 「騙されちゃって殺されかけたこともあったなぁ、普通に考えて狭い地下駐車場で爆発物を使うかな?おかしいよね?」 マヨネーズの酸味とコーンの甘さが絡み合う、タマゴは上品な出汁と砂糖の配分が素晴らしい。 チャを勢い任せに飲みしゃっくりが止まる。目頭が熱い。 ボトルを新しく開ける。 過去を振り返る。 「セイギオオキイタテが落ちてレディオから聞いたことがある内容が聞こえた体が勝手に動いてた」 スシを食べている。目頭が熱くなる。鼻を啜る。 「そこからたくさんイクサをしたの、ちょっとふざけた味方にカラテしちっゃたけどアタシは悪くない」 スシをたべている。雫が落ちる。ばらけたシャリが気管に入り咳き込む。 「死んじゃうかと思ったすごくコワかったんだ……でもそれ以上に周りの人を死なせたくなかった」 残っていたオーガニック・トロスシを一度に二貫も食べた。 自分が奢ったのに両親が分けてくれた、あの日踏み潰されたネタだ。 ゆっくりと噛む、言葉を考える、飲み込む。 「そしてね」 手帳が風で開き焼きこげた家族写真が月明かりに照らされた。 「今度こそ守れたんだ」 声が震える。視界がぼやける。 「パパ、ママ、全部終わったよ……」 すしをたべていた。 チャはあの日と同じ少しだけしょっぱかった。 「ごちそうさまでした。」 食材への感謝と死者への鎮魂を願う柏手を鳴らし、大声で情けなく涙を流した。 泣き虫が誰かに聞こえる前には街の喧騒がかき消す、その声を知るのは自分と割れた月のみでもうインガオホーと言うことはない。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「フフッ……こんな姿を見られたら一生揶揄われるのは間違いないね」 赤い瞳はさらに赤く、その下には涙の跡が流れていた。 感情を吐露したことで今後の事を考える余裕ができた。 「コレでやっと二人のお墓も建てられるけど…うーん…」 第一としていたのが復讐、セクトが崩壊したことで大きな目標を無くした彼女の心境にはぽっかりと穴が空いていた。 良い案が思い付かずにぼんやりと街並みを眺めていると夜の寒さが不安を引き出した。 「これからどうなるんだ?このネオサイタマは」 壊滅した組織の残党はまだ沢山いる、その中には自分と同じ傭兵になる者もいるだろう。 時が経てば同じような奴らも出てくるかもしれないし最近では海外の暗黒メガコーポも幅を利かせ始めている。 様々な不安の種がニューロンに芽吹き始める中、「ピボッ」IRC端末の着信音が鳴る、気分を逸らすようにすぐに開く。 「えっと依頼で貰った大量の食材を消費しきれそうにないから来ないか…ね?」 添付された写真には足のハヤイ食材以外に賑やかな光景がそこにあった。 鼻をバイオガニにがっちり挟まれている血のように紅い装束が目立つモノ、尻尾をイアイされ悲しんでいるドラゴンのホネを纏ったモノ、巨大なホネを虹色に発光させ料理配信をしようとしているモノ、バランスを崩し煮立った鍋に突っ込むユーレイめいた幸薄い者。 その他にも彼女が今まで縁を繋いできた者たちが励ますように写っていた。 涙を指で払いとる。顔がだらしなく歪む。 「アイツら……ッ!」 パンッ! 頬を強く叩き不安を振り払う。 心配する必要は無い、何故なら自分以外にもネオサイタマを守った人達を知っているから。 「こんな弱音を吐くなんてらしくないや」 目を閉じ大きく息を吸う。 今一度、自分の名付けたニンジャネームと向かい合う。 「アタシの…アタシの名前はデッドリーブレイカー!」 二度と理不尽な死を見逃さない為につけた名前はデッドリーブレイカーのニンジャとしてのエゴそのものである。 大きく息を吐き、目を開くと同時に弱気を拳で握り潰した。 「さてと…いや気持ちにはサヨナラバイバイしなくちゃ」 先程までの表情から一転し朗らかに笑いながら体を起こし、顔の傷を撫でながら次にやることを決めた。 「ここから集合場所は……アレを使えば一直線で20分ほど?激しい運動するから今食べた分はチャラってことでいいよね」 頬についたシャリを舐め取り、ブーツの爪先を地面に叩く。 丹田へカラテを込め、体内のスシとチャをニンジャ消化能力でエネルギーへ変換。 見つめる先は足場も何も無い虚空、たとえニンジャでもこの高度でウケミを取れなければ潰れたトマトめいた姿になるだろう。 「それじゃ行ってくる、またね!パパ!ママ!」 だが気にする事もなく空の容器とゴミを入れた紙袋を片手に躊躇いもなく飛びたち、ポーチから幾つかの鉄球を取り出し空中へ投擲! 「イヤーッ!」 鉄球が半透明なカラテ物質へ変貌、それを踏みつけ跳躍! 「イヤッ!イヤッ!イヤーッ!」 JAMP!JAMP!JAMP! ネンリキで球体を操作しイナバのウサギめいて月夜に飛び跳ねる。 不安定な小さいサイズの足場を的確に使っての高速軌道、なんたるニンジャバランス感覚か! イクサにおいて小さな足場を踏み締め縦横無尽に飛び回る己の戦闘スタイルを活かす為に積み重ねたトレーニング、即ちカラテがギリシャ神話に語られるヘルメス・ニンジャめいた空を蹴る移動を可能としたのだ。 月明かりに照らされた影が動く。壁面のガラスがその実体を映す。体を回転させ機動を変化、路地裏の強盗をストンプし再跳躍。高架下を潜り電車が走り抜ける音が響く。吹き抜ける風が意識を覚醒させる。空を駆ける。 「イイイイヤーッ!」 デッドリーブレイカーは、あの長い一日で身につけた一時的なリミッター解除、ニンジャオートファジーを発動し速度を上昇させた。 「うだうだ悩む暇があったらまずは腹ごしらえをしなきゃね!食材がアタシを待っている!」 ネオサイタマの空に黒橙の風が吹き抜けていった。 【グッバイ・デイ・アフター・デイ】 終わり。