「んあ?」  気がつくと、俺はベッドに横たわっていた。目を開けた瞬間に視界に飛び込んできたのは、見知らぬ天井とよく見知った猪獣人の中年男。 「おっ、目ぇ覚めたようやな。おっはーやで」  彼の名は猪頭 號。農協に所属する同業者であり、ご近所さんだ。 「猪頭さん? どうしてこんなとこに……。いや、そもそもここはどこですか」 「県ヘルの救護室やで。さっき職員さんから電話がかかってきたんよ。陸雄くんが鼻血を噴いて倒れたから迎えに来てほしいってな」  県ヘルとは県民ヘルスプラザの略称だ。  俺は確か、ジムでトレーニングをしていたはず。そんで、妄想の末に鼻血を流した俺を大我先生が心配してくれて……。 「やべえ……」  貧血を起こしてへたり込んだ拍子に先生のズボンをパンツごとずり下げちまったのを思い出した。そして、その時に先生の生ちんぽを目撃した事も。 「さては、スケベな事でも考えてたんか? ……なんてな。昔の漫画じゃあるまいし、そんなんで鼻血は出らんよな」  いえ、そんなんで鼻血が出ました。なんて、言えるわけがないので適当に誤魔化そう。 「ちょ、ちょっと激しく運動しすぎたせいだと思うんで……。わざわざ来て頂いてすみません」 「気にせんといて。互恵関係ってやつや。逆にワイに何かあったら陸雄くんに連絡が行くはずやからな。そん時はよろしく頼むわ」 「はい。ありがとうございます……」  県ヘルのような施設を利用する時には名前や住所、そして緊急連絡先が必要になる。俺と猪頭さんは親も兄弟も居ない独身同士。だから、何かあった時のために互いの電話番号を緊急連絡先にしているのだ。 「あっ、牛塚さん! 目を覚ましたんですね。良かった……」  扉が開き、大我先生が救護室の中に入ってきた。 「迷惑をかけちまったな、先生。気を失う前にとんでもねえ事をやっちまって、本当にすまねえ……」 「あ、あれは事故みたいなものですし、謝らないでください」  先生の頬が見る見るうちに赤くなる。先程の事を思い出して羞恥に苛まれているようだ。申し訳ないと思うのと同時に、恥じらう先生がエロいと思ってしまった。もっと恥ずかしがらせてえな。  ほわんほわ……(妄想しそうになったが理性で中断させた音)。    ……いかん、同じ過ちは繰り返さねえぞ! また鼻血を噴き出したらまずいから妄想はしない! 「また迷惑をかける事もあるかもしれへんが、これからもうちの陸雄くんを頼みますわ。大我先生」 「勿論です! なんなら、猪頭さんもここの利用者になりませんか?」 「魅力的な提案やなあ。最近、毎日のようにラーメンを食べとるせいか腹周りがキツくてたまらんからな。ちっとは運動した方が良いかもしれんわ」  互いの顔を見て笑い合う大我先生と猪頭さん。そんな二人を見て、俺は困惑してしまう。 「な、なんか大我先生とすげえ仲良くなってませんか? 猪頭さん」 「ああ。陸雄くんが気ぃ失ってる間、世間話に付き合ってくれたんよ。そんで、すっかり仲良しさんになったで。ワイみたいなおっさんの話を親身になって聞いてくれるなんて、良い先生やわ。ほんまに」 「お話が上手なのでつい聞き入ってしまいました。またじっくり、猪頭さんのお話を聞かせて欲しいですね」  大我先生が猪頭さんに気を許してやがる! 初対面のはずなのに、もうこんなに仲良くなっているなんて!  ……はっ! これはあれか!? 寝取られってやつなんじゃないのか!? 俺という男がありながら他の男に股を開いちまったのか、先生!?  ほわんほわんほわん(結局妄想が始まった音)。  § 「ぐっ、動けねぇ……っ!」  気がつくと俺は、頑丈なベルトで救護室のベッドに縛り付けられていた。全身に力を入れても拘束が緩む気配はない。自由に動かせるのは指先と顔だけだ。 「すまんな、陸雄くん。君が大好きな大我先生はワイ専用の肉便器になってしもうたわ」  声がした方に顔を向けると、そこには猪頭さんに身体を持ち上げられ、羽交い締めにされている大我先生の姿があった。猪頭さんも大我先生も、下半身は何も身につけていない。それに、お互いにちんぽを勃起させている。興奮しているのは明らかだ。 「う、牛塚さん……! 見ないでください……!」  先生の尻穴に、猪頭さんのちんぽが宛てがわれている。 「ワイは知ってるんやで。大我先生は見られると興奮するってな。だから、よおく見とくんやで陸雄くん。先生のアナルにワイのちんぽが突き刺さる瞬間をな!」 「や、やめろ!!」  制止の声は何の意味も無く、先生のケツマンコはぐちゅりと湿った音を立てて猪頭さんのちんぽを飲み込んでいった。 「うあああっ!」 「ほれ、あっちゅー間にワイのちんぽを全部飲み込んでしもうたわ。ずいぶんだらしないアナルやな」  そう言って、猪頭さんは激しく腰を振り始める。  これは激しめの洋モノのエロビデオでたまに見る体位──フルネルソンだ! くそっ、俺ですら大我先生にこんな下品なポーズをさせて激しく犯した事なんてないのに! 悔しい、悔しすぎるぜ!  ……なのに、俺のバカちんぽは猪頭さんに激しく犯される大我先生に興奮して硬くなっている。 「なあ、大我先生。ワイと陸雄くんのちんぽ、どっちが気持ちええんや?」 「そ、それは……んうううっ!!」  激しく抽送され、先生のケツマンコがぐぽぐぽと下品な音を立てている。音と動きで分かってしまう。先生のケツマンコが、猪頭さんのちんぽの形に馴染んでいる事を。 「教えてくれないともう二度と君とは交尾せんで? それでもええんか?」 「いっ、イヤです……! 僕はもう、猪頭さんのじゃないと満足できないんです……! 牛塚さんより、猪頭さんのおちんちんの方が気持ちいいから……!!」 「ははっ、悪いな陸雄くん。この通り、大我先生はワイのちんぽの虜や。これからはワイと大我先生の交尾を眺めながら一人でシコシコするんやな。それぐらいは許したるわ」 「そ、そんな……クソッ!」  猪頭さんの腰の動きが激しさを増す。どうやら絶頂の時が近いようだ。 「まずは一発目を派手に出すで! 下のお口で全部飲んでくれや、大我先生!」 「んあっ、くださいっ……! 猪頭さんの精子、欲しいですっ!」 「望みを叶えたる! さあ、イくでえぇっ!」  猪頭さんが激しく腰を突き上げた。直後、結合部から大量の雄汁がごぼりと溢れ出る。同時に、先生のちんぽからも白く濁った雄汁が大量に噴出した。  救護室内に、二人分──いや、三人分の雄汁の臭いがむわりと漂う。  二人の激しい交尾を見ながら、俺も射精してしまったのだ。悔しいのに、俺は何でこんな……!  § 「ていっ」 「ぐわああっ!?」  突如、頭に鋭い痛みが走って俺は現実に引き戻された。数瞬遅れて、俺は猪頭さんにチョップをされたのだと気付く。 「な、何するんですか!?」 「すまんな。陸雄くんが良からぬ事を考えている予感がしたから、つい手を出してしもうたわ」 「ぐっ……!」  図星だから何も言い返せない。 「ほな、ワイらはぼちぼち帰るわ。またな、大我先生」 「はい、ぜひまた来てください。猪頭さん」  うう。結局、今日は大我先生にかっこ悪いところを見せただけだったなあ。  ……とっとと帰って不貞寝しよう。 「あっ、牛塚さん」 「ん?」  ベッドから立ち上がるのと同時に、大我先生が声をかけてきた。 「元気になったら、また一緒に運動しましょうね!」  そう言って、大我先生が屈託のない笑みを浮かべる。  ぐっ、この笑顔を見たらすぐにでも一緒に運動したくなっちまう! 「……ああ! またな、大我先生!」  次に来た時は、妄想を控えめにして真面目に運動しよう。そう心に誓い、俺は猪頭さんと一緒に帰路につくのであった。 【了】